リノベーションオブザイヤー2024で部門最優秀賞をいただいた「他人間相続」という事例があります。相続は、跡目を継ぐこと。相続=価値観の継承は、血縁に限った話ではなく心で行うものです。元々の家主が創った家や世界観、空気感へのリスペクトが、「他人間相続」を生みます。今日は、この「他人間相続」の物語を思い出しながら、空き家(使っていない建物)について私の思うところをお話ししたいと思います。

「他人間相続」を求める人々
リノベーションという形で家を求める方(=リノベしたい買主)は、「他人間相続」の在り方を求めていることがあります。元々の家主が創った家や世界観、空気感へのリスペクトの上で、この家・この場所を使いたいという在り方です。「この吹抜けからの光が綺麗」「この縁側で日向ぼっこしたい」「この欄間が素敵」・・・リノベーションは「あるものを生かす」ことが根本にあるので、このような、あるものを肯定する感覚はとても自然なことともいえます。
対して、家を手放す側(=売主)の感覚はどうでしょう。大切な家を、どこの誰だか知らない人に渡すわけです。「お金になれば良い」「はやくさっぱりしたい」そういう思いの方もいるでしょう。しかし、愛着のある家を手放さなければいけない場合、多くの方は「大切に扱ってくれる人に渡したい」「安心できる相手であってほしい」と思います。特に「売土地」ではなく「中古物件」の場合は、家を壊さず次の人に使ってもらう前提なのでなおさらです。このように、売主の中にも、「他人間相続」を求めている人はいます。
ここで売主と買主のマッチングがうまくいけば、他人間相続ともいえる他人間売買が成立します。が、なかなか多くはないのが現実です。それはなぜでしょうか。
原因は様々ありますが、よくあるのは、買いたいけど魅力的な家がないという状況です。
なぜ魅力的な家が少ないのか
これは私の感じていることですが・・・原因のひとつは「手放さない」という選択肢が存在するからだと思っています。もし、相続した家が代々の大事な家だったらどうでしょう。遠方にいて住むことができなかったとしても、「自分の代で売る」というのはご先祖様に悪いような気がしてしまうかもしれません。もし、田舎にある古くて味のある一軒家を持っているとしたらどうでしょう。大切な場所に、赤の他人に踏み入られてほしくないと思うかもしれません。もし、一等地にある使っていない建物を持っていたとしたらどうでしょう。何かに使えるかもしれない、もしくは高く高く買ってくれる人がいるかもしれないと思って、その日を待ち続けるかもしれません。もし、家の中が物で溢れ返っていたらどうでしょう。売るために片づけるなんて億劫だから放っておけばいい、そう思うかもしれません。
空き家を手放せないのなら
もしあなたが壊したくない建物を所有しているなら、手放さなくても大丈夫です。ただし、そのままにしておくのはもったいないので、使いたいと思う人が使える場所にしてほしいと思っています。家は、人が使うことで生かされます。誰かが大切にしてきた家を大切に使いたいと思う人はとても多くなってきました。それぞれの価値観が明確になり、意外なところに魅力を感じてくれる人もいます。なので思い切って売買されるととても良いのですが、思い切れない場合は、賃貸でもレンタルスペースでも宿泊施設でも良いと思います。所有しながら、そこに価値を見出してくれる人に使ってもらう。同じ価値観の人で使うって、とっても素敵なことだと思います。「他人間相続」は価値観の継承です。このようにもっと広義に捉えていくことも大切かなと思っています。
空き家を、ただの空き家と思う勿れ
そして、空き家は町の余白です。空き家が、町の中にある新しい余白の使い方になればと思っています。昔の家は所有者だけのものではなく、家族や親戚、そして地域の人にとっても大切な場所でした。もう一度、町にみんなの場所を。それを叶えるためには、空き家を所有されている方の力が必要だと思っています。
この考え方がじわじわ浸透していくことで、町にさらなる彩りが生まれることを期待しています。



















