皆様、こんにちは!愛知県豊橋市でリノベーションを専門に手がけているリノクラフト株式会社の今泉です。今回のブログは昨年の暮れにリノベーションオブザイヤー最優秀作品賞を受賞した他人間相続のリノベーションエピソードを振り返ってみたいと思います。
元々は中古住宅として流通している築40年くらいの古家を探して購入+リノベーションを検討しておられたH様ご夫妻。いわゆる中古を買ってリノベーションという計画だったのですが、なかなか気に入られる物件が見つからない。
ご希望は広い敷地と間取りがあって、週末には家族や親戚が集まれる家。でも中古流通では少ないんですよ広い敷地と間取りの家って。なので物件探しは困難を極め2年ほどの歳月を費やすことになってしまいました。ちなみに何故、広い家は中古住宅として流通しないのか?単純に需要が少なく売却が困難になるため建物は解体され、敷地は分筆登記(1つの土地を理論上で複数に分ける)されてしまい、そのままの状態で売られることは本当に稀だからです。
そこで一計を案じたのが「売地(上物あり)」売地として売り出されているものの、建物はこれから解体を予定している物件を片っ端からリサーチして見つかった家が始まりのきっかけです。
見つかった家はこんな状況。庭木は鬱蒼と茂り訪ねる物を拒んでいるように見え、外壁は雨漏りの兆候が散見されておりリノベーションできるかと問われたら「できればリノベーションには向かない」建物と言わざるを得ない状況です。
しかしこの家をすっかり気に入ってしまった施主H様。しかし当然のようにそこに問題が起きてしまうのです。解体更地渡しとして売り出したこの土地、建物に問題が起きると迷惑になるので建物を使用する前提では売却できなし。これには正直、参りました。売主H様(偶然にも同じイニシャル)の言われることも至極もっともであり、古くなった建物を案じ思い出ごと除却してもらいたい売主、古いながらも味があり魅力を感じるのでリノベーションして暮らしたい施主、両者のすれ違いを克服することから企画がスタートしました。

実際に私たちからの提案として第三者による既存住宅状況調査を実施すること、そしてその結果を双方で確認と承諾をした上で売主責任を問わない売買にすることで合意を取付けることに成功しました。本来は安心安全な建物を第三者に調査してもらう既存住宅状況調査を逆手に取って、問題箇所は問題箇所として認識した上での売買とできたのもリノベーションでしっかりと問題点を是正できる前提があってこその事。これは建物の仲介とリノベーションの設計施工を一気通貫で対応できるのリノクラフトならではの強みでもありました。
私たちからは永く暮らしていく上で安全性と快適性は確保は必須であるものの、施主H様の家の面影を残したリノベーションにしたいと言う思いを具体化するべく工夫を施していきました。
そして出来上がった空間がこちらになります。


決して間違い探しをして欲しいわけでは無いですが、向かって左がBeforeそして右がAfterとなっており、板張りの壁や柱や梁などの構造材は表のまま、建具や床にキッチンなどが新しくなっています。性能を向上させながら往時の気配を強く漂わせた仕上げの工事は困難ではありましたが、施主H様はじめ私たちも納得の出来栄えになっています。
本当に古く懐かしい物を愛でる施主H様。古くなった建物の歴史や面影なども含めて受け入れて引き継いでいこうとする想いこそが、売主の心をも動かし他人同士ではありますが家の歴史を引き継ぎ、実務上は売買ではありますが精神的には相続のような事例になりました。私たちをこのようなリノベーションを「他人間相続リノベーション」または「他人間相続」と呼ぶことにしています。今後も古く味わいのある家の歴史や面影を引き継いで暮らしたい、そしてそのような人にこそ自分の家を託したい方とを繋いで行きたいと考えています。
中古住宅を買ってリノベーションした人はもちろんのこと、住み慣れた家を手放さなければならないけど家を引き継いで暮らしてもらいたいと考えている家主の方の相談も承っています。お気軽にお問い合わせください。